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第25話:スピーチとエッセイの違い(原稿を丸暗記することについて)

私がトーストマスターズに入ってマインドマッピングに出会うまでの3年間くらいはスピーチを丸暗記していました。
マインドマッピングはいずれ取り上げることにして、それまでは原稿を暗記してそれをいかにもスピーチっぽくやっていたのです。(今でもまだ原稿依存症から脱しきってはいませんけど。)

厚木座間クラブにはIさんというTM歴20年ほどのベテランATMさんがいらっしゃいます。この人のスピーチは、メッセージもクリア、アイコンタクトもすばらしく、Deliveryも申し分なく、「間」も効果的に使われていて本当に尊敬しております。この方は、原稿を暗記されません。そもそも原稿を作らないのです。
私は、いつもIさんのようになれればいいなど思っていました。どのようにすればそのようになれるのか?

その自問自答という思考の過程で、自分の「原稿丸暗記スタイル」がいかに効果的でないスピーチを生んでいたかがわかりました。

下記私なりの「原稿丸暗記の功罪」に関する分析結果です。

① 言葉がうわすべりになる。

紙に書いた考えはどうしても、硬くなりがちです。ここでは文語とでもいいましょうか?
文語での文章は、相手に読む時間、読んで理解する時間、読み返す時間を想定しているのに対して、口語を主体とするスピーチは、相手にその場で理解されることを想定しています。後戻りはできません。したがって、スピーチに文語(あるいはBig Words)を混ぜてしまうと、どうしてもAudienceの理解度は落ちてしまいます。
Speakerは、Audienceが自分のスピーチに対する理解度が下がっていることは、壇上からでも見ていればわかりますから、話しながらだんだんと自信をなくしていって言葉がうわすべりになってしまいます。うわすべりになった言葉は強さを失っていますから、メッセージも弱くなっています。

② アイコンタクトが不十分になる。(暗唱目線になる)

アイコンタクトは重要です。「目は口ほどにものを言う」のとおり、人間は、相手の言葉をきいて、そして相手の目を見て、相手を理解します。目をそらされてしまうと、聞き手は話し手に対して「?」と思ってしまいます。
暗唱していると、どうしても空中にうかんだ見えない原稿を見ながら話しますので、視線が聞き手のところに向きません。これはあまりよろしい状態ではありません。

③ Audienceと対話ができない。

視線がそれているのですから、Audienceと対話ができません。Audienceと考えのキャッチボールができません。
上手なスピーカーは、このキャッチボールをしながらどんどんスピーチを盛り上げていきます。

では、どうしたか?

丸暗記と暗唱をやめようとことさら努力したことはありません。どうしていいかわからなかったからです。
しかし、あるときマインドマッピングと言うノート術を学んでそれがスピーチ作成に応用できることを学んで、始めてから文章ありきの暗唱志向から、アイデアありきのスピーチ作成志向に自然と変わっていきました。
なお、マインドマッピングはあくまで、私にとって暗唱志向・原稿依存症から離脱するきっかけとなっただけで、そうなるために必須というわけではありません。

収穫は暗唱志向、原稿依存症からだんだん離れる中で、アイコンタクトの大事さ、Audienceとの対話の大事さを痛感したことです。これは大事な発見でした。

さて、いろいろと書き連ねてきましたが、私は決して原稿丸暗記を否定しません。クラシック音楽を考えると、皆さん楽譜を暗記(暗譜)して、そこにさまざまな表現をつけて発表会、コンサートに臨んでいらっしゃいます。
ただ、やはりクラシックの場合の暗譜はたんなる暗記ではなく徹底的に楽譜を読み込んで、そこにある物語(主テーマ、伏線、隠し味)を理解したうえで自分なりの表現、人生観を盛り込んで発表しますので、その点がたんなる暗記とは異なります。
およそ原稿のあるPerforming Art(音楽、踊り、落語・講談などの話芸)は、発表までに徹底的な解釈というプロセスが入りますので、原稿の丸暗記といってもはるかに高い次元で演じられます。

ちょっと混乱してきましたが、楽譜を使わないJazzのアドリブと、楽譜を徹底的に読み込むクラシック音楽をどちらがよいか比較することはできません。ただ、どちらも音楽の真髄に迫るために究極のアプローチをしていることを私は忘れないようにしたいと思っています。

英語が母国語でない私にとって原稿を完全にやめてしまうのはまだまだ難しいです。完全に原稿がいらなくなる日がいつ来るのかはわかりません。当面、紙に書かれた「エッセイ」をいかに読み込んで「スピーチ」にするか?についてもうすこし悩んでみたいと思います。

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Comments

こんばんは。
浅井@原稿依存症です。(笑)

興味深い内容ありがとうございます。

私は、日本語・英語を問わず、基本的には完全に原稿を作り、丸暗記するタイプです。
マインドマップを知った今でも、そのスタイルは変わっていませんし、今後も変わらないと思います。

東さんが「原稿丸暗記の功罪」として3点挙げられていますが、私の場合は、事前に原稿が無いスピーチ(テーブルトピックスや論評)の場合の方がよほどこれらの功罪の餌食になっている気がします。自分の考えを表す言葉を探すことに必死になり、聴衆との対話どころではなくなるためです。

私が原稿を作るときには、時間をかけて作り込みますし、かなり推敲を重ねます。そうすることが、より自分の伝えたいメッセージを明確にする作業となっています。英語の場合は特に母国語でないため、自分が表現したいことを伝える適切な単語や言い回しを見つけるのに、辞書に頼ることも多々あります。自分の気持ちによりピタッとくる表現を求めて、試行錯誤しながら、原稿を作り上げていきます。

ですから、原稿が出来上がる頃には、自分の言いたいことが非常にクリアになり、かつ自分の中で消化出来ている状態になります。辞書で調べた単語や言い回しも、この頃までには「自分のもの」となっています。ここまで来たら、本番は自分の中に入った原稿を言葉に乗せて、気持ちとともに送り出すという作業となります。原稿を完全に消化できていれば、本番でアドリブを入れたり、聴衆の反応によってアレンジを変えたりすることが可能になると私は思っています。原稿が頭に入っているからこそ、アイコンタクトが取りやすいということもあります。(もちろん100%毎回そうだというわけではありませんが)

典型的な丸暗記・暗唱型スピーカーである私ですが、最近は、スピーチの最中に原稿がスッ飛ぶことがほとんどなくなりました。マインドマップも作ったりしますが、スピーチ中に見ることはめったにありません。それは、やはり自分の中に「原稿」という一つの完成形が存在するからだと思っています。

かの大嶋さんは、マインドマップの師匠ですが、マップを作る前に原稿を作っていると聞いたことがあります。(その上でマップを作って原稿を捨てる)
また、1日に7~8種類もの題目をこなす歌舞伎役者達は、すべての台本を暗記した上で全部忘れる、という作業を行うそうです。
修行が足りない私はまだ原稿を捨てたり、覚えた原稿をすべて忘れたりする境地までは達していませんが、恐らくそれを目指していくのだと思います。

原稿丸暗記・暗唱派の擁護論でした(笑)

Posted by: 浅井昭江 | May 02, 2005 at 10:38 PM

浅井さん、ありがとうございます。

浅井さんは丸暗記派だったのですね。そうは見えませんでした。というのは、浅井さんはPrepared Speechの場合、丸暗記を感じさせない自然なプレゼンテーションをされるからです。

私は音楽が好きなので、たびたびスピーチを音楽にたとえますが、浅井さんの自然なプレゼンテーションは、楽譜を徹底的に読み込んで作曲家の意図を解釈し、それをいかに効果的に伝えるかを研究している演奏家の姿勢に共通するものを感じます。ただ浅井さんの場合は作曲家兼演奏家ですので、ご自身の音楽をいかに伝えるかに相当なエネルギーを注ぎ込んでいることが理解できます。

浅井さんのスピーチに向き合う姿勢は、ひとつの確立されたスタイルとして敬意を表します。

一般的に、世間を見回すとスピーチをする人は、原稿を用意して、だいたいそれを棒読みするか忠実に読み上げます。冗談すら原稿に書かれたものを読むわけですから、面白く聞こえないことも多々あります。

私はそれはいやだし、TMに入ってスピーチのトレーニングをするからには、原稿があっても「いかに自然に」スピーチを通して聴衆と対話をしていくかがメッセージを伝えるうえで重要と思っています。

私の理想とする境地は、どんな場においても準備があってもなくてもきちんと自分の意見を明るくPositiveな姿勢で表明でき、しかも相手に誤解されることなく意見を理解してもらえる事にあります。願わくば、聞き手にも共感していただきさらにアクションまで起こしてもらえると最高です。原稿がなくてもそんな事が自然に出来るCommunicatorになりたいというのが私の夢でもあります。

そのための訓練として、今後も原稿を作りスピーチを作るでしょうし、マインドマッピングも使っていくでしょう。あるいは、徹底的に練習した後で忘れるというプロセスをあえてとり心の中でアイデアを発酵させるプロセスも取っていくと思います。

今後とも貪欲にいろいろと挑戦していきたいと思います。その意味で浅井さんのスピーチ作りについてお伺いする事ができて大変ラッキーと思う次第です。

Posted by: | May 03, 2005 at 09:33 PM

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