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第188話:映画「12人の怒れる男」とProject9 Persuade with Power

映画「12人の怒れる男(12 Angry Men)」は、リーダーシップとコミュニケーションの教科書のような映画だと見るたびにおもいます。(Wikipediaの「12人の怒れる男」の記事

昨日(12月26日)に東京インターナショナルトーストマスターズクラブのご好意でBasic ManualのProject 9に挑戦するメンバーのEvaluationする機会をいただきました。その準備のためにBasic ManualのProject 9:Persuade with Powerを読み込みました。論理をもって相手に自分の考えを受け入れさせるというプロジェクトです。

Basic Manualのこのプロジェクトを読み込んでいるのと同じタイミングで、たまたまこの映画のDVDを見る機会がありましたが、Persuade with Powerの趣旨と重なって見えてきました。

この映画をProject 9の視点で考え直して見ます。

【ストーリー(序盤)】
父親殺しの罪に問われた18歳の少年を審理する12人の陪審員の話です。舞台は、狭い陪審員室。陪審員の評決は全員一致が原則なので有罪・無罪を決めるためには12人全員の意見が一致を見る必要があります。

さて、裁判長すらやる気を失っている法廷から陪審員室に移動した12人の陪審員。みな抽選で選ばれた普通の市民です。うだるような蒸し暑さなのに、室内には冷房もなく唯一の扇風機も動きません。陪審員達の心象は「有罪」。だからさっさと切り上げてその後の野球のナイターに行きたい、株価の動き、など自分のプライベートや仕事のことが気になっています。

そんな中で、ただひとり第八陪審員が「Not Guilty」を申し立てます。11人が有罪で1人が無罪と言う状況です。全員一致で有罪評決をだしてさっさと自分の生活に戻りたいほかの陪審員達はいきり立って詰め寄ります。「かならず一人はこういうやつがいるんだよな。」とはき捨てるようにどなる陪審員もいます。

そんな中、第八陪審員は「これまで提出された証言、証拠に合点のいかないからまず一つ一つ話をしよう。」と穏やかに自分がこれまでの法廷での審理を聞いていて納得のいかなかったことを一つ一つ冷静に論理的に話していきます。

【第八陪審員&Project9の観点から:有罪11対無罪1の状況の中で】
自分(第八陪審員)以外の聞き手は全員少年の有罪を信じて疑いません。つまり聞き手は①敵対的、②無関心(Project 9のThe Audienceより)のどちらかです。

彼らは、すでに「有罪」で心を決めていますから、どこの馬の骨ともわからない人間の言葉で自分の決定を変えたくありません。しかも、陪審員は一般市民の中から無作為に選ばれた人たちで個人的なつながりはまったくありません。お互いの名前すら知らない。知ろうともしない。

こんな中で第八陪審員は他の11人の陪審員達と、陪審員室に移って初めて人間関係を構築しますので、彼が使えるのは知識と熱意とロジックだけです。(Project 9のBurden of Proofより)彼は余計な感情を一切排除して、ロジックだけで他の陪審員達と議論をしていきます。

議論を重ねるうちに、第八陪審員のロジックに合点がいき無罪に傾く陪審員が、一人また一人と増えていきます。陪審員が一人、また一人と「無罪」に転じていくうちに、彼が使える武器は、「ロジック」に加えて「名声」(Reputation/あるいは実績)も出てきます。(Project 9のYour Rolesより) 「名声(あるいは実績)」は人を説得する上で大変有効で、一人「無罪」に転向させるたびに「名声」が大きくなってきます。

【第八陪審員&Project9の観点から:有罪6対無罪6の状況の中で】
議論の途中で何度か有罪か無罪かの投票を行いますが、無罪派が半分にまで増えてきます。ここで第八陪審員の視点で他の陪審員(聞き手)を見ると、最初に敵対的か無関心が11人だったのに、6対6の状況では友好的な陪審員(聞き手)が半数になっています。

ロジックと、個人的な感情を排除して「真実は何か?」と情熱的に追求する第八陪審員の熱意が一人、また一人と考えを変えていきます。まさにProject 9のPersuade with Powerを地で行っています。

【第八陪審員&Project9の観点から:有罪0対無罪12になるまで】
有罪6対無罪6から先は非常に困難を極めます。 敵対的な態度をとる陪審員の中には、今回の事件とは別の「青少年に対する個人的な確執」「自分の意見を絶対に変えたくない性格」なとが見え隠れしてきます。

有罪派の数が少なくなるにつれて残された有罪派の態度は先鋭化していきます。ここを変えるのは容易ではありませんが、第八陪審員の説得のワザはさらに冴えてきます。

あいまいなものを具体化して「見える化」(Visualize)したり、複数の事象をつなぎ合わせて時間軸の順に並べるなど、整理されてない情報を判断できる形にします。そうすると、これまで正しいと思っていた情報が実は誇張であったりありえないことだったり、あるいは証人の「思い込み」であったりとはっきりとしてきます。それに触発されたほかの陪審員達のロジックもさらにさえてきます。とくにあいまいな情報を、陪審員室という殺人が行われたのとはまったく違う環境で検証するその手法にはただ感嘆するばかりです。

有罪11対無罪1という圧倒的に不利な状況から、一つ一つ反証を挙げ理詰めで説得する第八陪審員のそのバックボーンには「真実は何か?」「正義は何か?」をあくまで追求する姿勢があります。

いいかげんな判断や、妥協を一切許さない彼の姿は、他の陪審員の胸を打ち50年のときを超えて私の心を揺さぶりました。

【ラストシーン】
印象的です。ここでは書きません。ぜひご覧ください。

【まとめ】
どういう観点でこの映画を見るかによってまったく見方は変わってくると思いますが、

私はトーストマスターズの観点で見ると、第八陪審員のコミュニケーション能力とリーダーシップ能力、そしてその人柄に限りない憧れと敬意をもちます。

トーストマスターズも人間の集まりですから、どうしても感情的にぶつかるときもあります。そんなときの対応の一方法としてもこの映画は勉強になります。

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