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第318話:コミュニケーションと「リーダーシップ」というけれど

第317話:理想的なコンテスト運営について考えるを書いていて、こんなストーリーを考えていました。ストーリーの中のエピソードのほとんどは私が直接経験した実話です。

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dogコンテストシーズンも始まるね。君はコンテスト、出るの?

catうん、一応そのつもり。君は?

dogいや、うちのクラブは今年コンテストを主催するから、そっちのほうで忙しくてでないつもり。

catま、いろいろと忙しいからね。でも、コンテストの主催って何であんなにしんどいのかね?

dogあら?別にしんどいと思ったことはないけど。なんでしんどいと思うの?

catだって、いろいろとやんないといけないじゃない。ジャッジを頼んだり。各クラブにお願いして出席者を募ったり。会場の手配。マイクの手配。パーティーの手配。それだけならいいけど、なんかいろいろとうるさく言われるし、終わったらもう二度とやりたくないって思うこともあるよ。実際に、コンテストが終わるとメンバーがごそっとやめてしまうという話もうわさで聞いたことがあるよ。

dogまぁね。でもコンテストマニュアルとルールブックのとおりにやれば問題ないんだけどね。

catでも、あれ英語で書いてあるじゃない。読むのがめんどくさい。

dogえ、君のクラブは英語クラブでしょう?何言ってんの?がんばって読めよ。

catははは。わかってるよ。でも。なんかルールとかマニュアルとか日本語でも読むのがめんどくさいのに、英語となるとちょっとね。

dogま、そうだね。言い回しも独特だからね。それより、問題は、「いろいろとうるさくいう奴」の存在だよね。たとえば、どんな風に言うんだろう?

cat昔、あるコンテストで、名札の記入を参加者自身にお願いしたことがあるんだよ。プラスチックのケースと中に入れる名刺大の紙とペンを渡して「あちらのテーブルでご記入ください。」ってね。そうしたら「参加者に書かせるなんておかしい。」って血相変えて怒鳴られたよ。どうしてトーストマスターなのに、普通に話せないんだろうって思ったよ。

dogふーん。まぁその現場にいたわけじゃないから「血相変えて」とか「怒鳴られた」ってのは主観的だからわからないけど。

catあと、アンケート用紙っていうかフィードバック用紙があるじゃない。あそこに、けっこう殴り書きでぼろくそかいてくる人もいるんだよね。

dogまぁ、そういうのはよく聞く話だな。でも、それってぜんぜんトーストマスターじゃないよね。何しにきているんだろうと思うよ。

トーストマスターなら、最低でもEvaluationのスキルを使うべきなんだろうね。つまり、よい点をほめ、改善点を具体的に提案とともに提示する。このスキルって、トーストマスターの例会を一歩出るとどこかへ行ってしまうんだろうね。まぁ、私にもそういうところはあるからあんまり人のことは言えないけどさ。

cat実際問題、新しくクラブに入った人の中には、そういうのを見てかなり心象を悪くしてすぐに退会するか、次回のSemi Annualの更新のときに辞めていく人もいるんだよね。

dogうーん、ますますトーストマスター的じゃないな。私はねー、トーストマスターの中にいろんなミスマッチがあると思っている。これは人間社会のどこにでもあるからある意味仕方ないんだけどね。

私が思うミスマッチってね。たとえば、ある人が英語教室とか英会話サークルを探していたとする。たまたま市の広報誌でトーストマスターズを見て見学に行った。

そうすると、みんな英語ですごいスピーチをしている。しかも非営利のサークルときていて会費も安い。

すごいけど、自分にやれるかわかんないけど、二回、三回と見学してトーストマスターズの教育システムがわかってきてすばらしいと思って入会する。つまりX年後に、ベテラン会員のように英語で立派なスピーチをしている自分の姿を夢見ているんだよね。

で、タイマーとかアイスブレーキングとかいろいろとやってみる。いつも暖かいEvaluationやフィードバックをいただく。失敗してもそのことを責める人は誰もいない。

「すばらしい!」

さて、秋のコンテストということで、実行委員長から「○○さん、受付をやってもらえますか?」とお願いされ、「私、そういうのやったことがないので、できるかどうか自信がありません。」とお断りするけど、実行委員長から「大丈夫ですよ。経験者の方からサポートしてもらえますよ。」といわれやってみる。なんか来場者の人からわけのわからないことで怒られたけど無事勤め上げる。

翌年4月。次期役員選挙で、推薦委員さんから「○○さん、来年6月からクラブの役員をやってみませんか?」と推薦を受ける。もちろん、「入ったばかりですし、何もわかりませんから、どなたか経験のある方にお願いします。」と辞退するけど、「大丈夫ですよ。経験者の方からサポートしてもらえますよ。」といわれやってみる。途中で、いろいろな難しい問題もあったり、会員から怒られたりし、ふと気がつく。

「自分は何しにトーストマスターズに入会したんだっけ?」とね。

ミスマッチだったかもしれないってね。

catうーん、わかるけど、逆もあるんじゃないの?超ベテランでTMのことを何でも知っている人が、クラブの経験の少ないメンバーに「愛のムチ」とばかり厳しいコメントや、さっきの受付での「血相を変えて文句」言ったり、フィードバック用紙にぼろくそ書いたり。本人はなんとも思っていないけど、周りはみんな「ミスマッチ」と思ったり。

dogうーん、根が深いな。そうすると私も自分のことはTMにマッチしていると思っているけど、実はミスマッチなのかもしれない。マッチしていると思っているのは自分だけで、周りはみんなミスマッチと思っている。寒いな。

catま、そんな風に掘り下げるのは出口がなくなるからやめとこう。

dogコンテストでの役割とかクラブ役員とかってTMでいうと、リーダーシップトラックのほうじゃない。TMに来る人はたいていコミュニケーション、その中でもスピーチに魅力を感じてくるから、リーダーシップトラック的な部分のことをやらなければならなくなると、そこに著しくミスマッチを感じることがあるのは理解できるよね。

catでもさ、こういうサークルって必ず運営する人がいるし必要だよね。で組織の運営ってお互い様なんだから、いつまでも避けて通るわけには行かないと思うんだけどな。

dogでもいろんな問題があると思うよ。

まずリーダーシップにまったく興味がない人。たしかにもうご自身も60歳を過ぎて自宅ではご主人のお父さんの介護でつかれきっていて、トーストマスターズで大好きな英語に浸っていたい。そういう人にリーダーシップのディベロップメントっていったって酷だよね。年齢が高い会員が多いクラブだとこれはよくある。私も過去、ある人に役員をお願いしたら「今年85歳になる晩年の母と一緒にいる時間を大切にしたいのでほかの人に当たってください。」と断られたことがある。若い人ならまだこれからというチャンスはたくさんあるけど、ある程度年齢がいってしまうと人生の選択肢も若い人よりも少ない、少なくとも本人が少ないと思っていると、やらないだろうね。

それから、自分のスキルディベロップメントだけにしか興味のない人。英語大好きな人だったりするね。自分のことしか見えていないし考えていないから、リーダーシップポジションをお願いすると、けっこうびっくりされる。

次に、以前別の組織で役員をやってもうやりたくないと思っている人。思いっきりやって自分のリーダーシップの力をよく知っている人の中には、「自分があまりリーダーシップの力を行使しすぎると、周りを振り回してかわいそうかもしれない。」と遠慮している人、あるいは逆に組織の役員をやってひどい目にあっている人は、もうやりたくないと思っているかもしれない。

次に、リーダーシップ未経験で、自分にはできないと信じ込んでいる人。でも、こういう人はいけるかもしれないよね。

catまぁ、いろんなパターンがあるよね。ところで、TMIはここら辺の運営ノウハウとしてなんていっているの?

dogお、いい質問だね。プレジデントマニュアルの、、、、

catお、いつもプレジデントマニュアルを持ち歩いてるの?すごいね。筋金入りだね。

dog任しといてよ。27ページ目のMembership Buildingにこうある。「We live in a mobile society in which people often change jobs, residences and lifestyles. Because of this, people may find it difficult to make a strong commitment to a Toastmasters club. Therefore, even clubs with 40 or more members need to continually bring in new members. Not only does building membership add to your club’s roster to give you a stronger base of leaders, it provides the club with a continuous flow of fresh, new ideas and personalities.」

日本語にするとこういうことでしょう?

「私たちは、頻繁に職を変え、住む場所を変え、ライフスタイルを変える移動社会で暮らしています。これにより、私たちは、ひとつのトーストマスターズクラブだけに自分の時間を割いていくことは難しくなっているといえます。それゆえ、クラブが40人以上の会員がいたとしても常に新しい会員を入れていくことが求められます。会員を増やすと言うことは将来のリーダー候補を確保することのみならず、クラブに常に新しい考えや個性をもたらします。」

つまり、新会員を常に入れていくことで将来のリーダー候補をその中から見つけ育てていこう、といっている。この考えは正しいと思うよ。クラブに今リーダー候補がいなければ、新入会員を勧誘してそこから育てていくしかないからね。

catそうだね。リーダーシップにまったく興味がない人に無理強いすることはできないからね。

dogでもね、いつも思うんだけどトーストマスターズにいると、いつの間にかリーダーシップをある程度実践しているんだよね。これに気づくと、「あ、今自分がやっているのがリーダーシップか」って腑に落ちるんだと思うよ。

たとえば、TMODね。司会者。あ、君のクラブはTMOEなんだよね。夜の例会だからね。

これってある意味リーダーだと思わない? 次回例会を仕切るってゴールがあって、それに向けて役割を持った人を集めて確認して、その役をやってもらう。当日はみんなの前で司会をやる。つまり、その例会の準備でリーダーシップを発揮して、例会の中でみんなの前でリーダーシップを発揮している。

別にクラブの会長でなくても実はリーダーシップを実践しているんだよね。

総合論評だってそうだよね。General Evaluator。これだって、例会前に各Evaluatorたちと連絡を取り合って、何?君のクラブはやってない?ま、いいや。で当日の論評セッションをみんなの前で仕切る。そして役割を持った人が無事勤めを終えたら、拍手で感謝の意を伝える。ね?これってリーダーシップそのものなんだよね。

catそうだね。

dog今はコミュニケーションマニュアルとリーダーシップマニュアルが分かれてしまったけど、以前はBasic Manualはコミュニケーションとリーダーシップだったからね。

私がトーストマスターズに入ってしばらくして、実はリーダーシップを実践していることに気がついたときに、「コミュニケーションとリーダーシップ」って切り離せないんだなって気がついたんだよ。

たとえばスピーチコンテストを運営するときに、トーストマスターズで学んだスキルとフルに活用すれば、そんなに特別なことをしなくてもできるんだよね。

そもそも我々は例会を月に2回やっていて、ま、月1回のクラブもあるけど、年間例会を20回やっている。例会のプログラムもよく見ると、スピーチコンテストと基本的な構成は同じだね。ま、コンテストは勝負だからエネルギーのレベルが違うけど、基本は同じだよね。

だから、逆に言うと、我々はコンテストの予行演習を年間20回もやっているようなものなんだよね。だからコンテストの運営がいやっていうのは、トーストマスターズから学んでいないんじゃないのって言いたくなるんだよ。

cat熱いね。

dog熱いよ。でも、そう思わない?

catわかるよ。で、もういちど「いろいろとうるさくいう奴」のことを思い出してみて。まぁ、もうすこし前向きな言い方をしよう。

正直我々は感謝の心が足りないのかもしれない。自分のことを振り返ってもそうなんだけど、トーストマスターズに入会する前って、こういう行事があると、けちをつけるとか厳しいことをいうのが貢献だと思っていたんだよね。だからコメントシートを書くとき、感謝の心ではなく、なぜか怒りがこみ上げてきて批判を書いていたことがあったな。

でも、トーストマスターズって、ちょっと宗教っぽいって思うことも正直あるけど、リコグニションっていって感謝の気持ちをきちんと表すでしょう?あれってやっぱり大事なことなんだよね。

コンテストって正直我々のエクストラな時間を使ってやるじゃない?だからしんどくて当たり前なんだよね。しかも、我々は仕事や家庭のほかにトーストマスターズをやっている素人集団なんだよ。だからプロみたいにはできないよね。失敗しないほうがいいけど、失敗するんだよ。

そこをあげつらってコメントシートに殴り書きするって、スピーチの論評だったら乱暴なフィードバックをするのと同じなんだよね。乱暴なEvaluationで即退会したって例をたまに聞くからね。コメントシートにそんなコメントを書く人ってやっぱりトーストマスターズから学んでいないと思うな。

コンテストを主催したクラブにもっと感謝の意を表さないとね。初めてコンテストの中で何か役割を引き受ける人もいるかもしれない。そういう人に感謝の心を伝えるって大事だし、リーダーを育てる、人を育てる上で大事なんだよ。

それができていないと、もうコンテストなんて二度といやだ、もうトーストマスターズなんてこりごりってやめていくし、来期のコンテスト主催クラブを募集してもだれも手を挙げないってことになるよね。

コミュニケーションとリーダーシップを標榜するトーストマスターズクラブなんだから、組織をあげて育てないとね。たった一言の乱暴な言葉がリーダーシップを学ぶ機会を奪うことになるって肝に銘じないとね。

dogなるほど。

catさっきミスマッチの話をしたけどさ、ある人がね、トーストマスターズに入って一年くらいしてから、「どうも、トーストマスターズって自分がやりたかったことと違う。ミスマッチだったな。」って思ったんだって。

dogで、やめたの?

catいや、この人は、それまでのトーストマスターズでの学びを振り返って「自分が最初やりたいこととは違うけど、トーストマスターズに入って自分が思っていた以上のことを学んだ。」から、続けようと思ったらしいよ。

dogふーん、いい話だな。

catだろ?ふー、今日はいろんなこと話たな。何話たっけ?

dog勘弁してよ。もうそろそろ終電がなくなるから帰らないとやばいよ。でも一言で言うと、やっぱりこういうボランティアのただ働きの組織って、貢献という労働に対しては、感謝という通貨が対価なんだよね。労働に対して対価が支払われるから回っていくんだよね。いっそのこと思いっきり感謝してボーナスにするのもいいよね。

catうまくまとめたな。コミュニケーションと「リーダーシップ」というけれど、別に特別なことじゃないんだよ。我々はいつの間にかリーダーシップを実践していて、案外気がついていないのは本人だけかもしれない。さすが80年の歴史のあるトーストマスターズプログラム。巧妙だな。

dogはは、ま、がんばろうよ。

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Comments

東さん、楽しいインタビューをありがとうございますhappy01
私のクラブでは、今日の例会でコンテストの話をしたところでしたので、紹介をします。

「In-house contestをするかどうか?」

メンバーからは以下のような意見が出ました。
* In-houseは必ずしもする必要がないので、スピーチを6回終わった人で参加したい人がエリアコンテストに参加すればよい。
* やはり、In-house contestをした方がいい。
* Leadership manualに、クラブのスピーチコンテストの手伝いをするという項目がある。コンテストをすると、Leadership manualを進めている人は要件を満たすことができる。(Project 6: Help organize a club speech contest)
今回は参加者が少なく、票決にはなりませんでした。

また、第317話より「コンテストルールの説明をチーフジャッジが丁寧にやっている例」について。
当地のチーフジャッジは、"All the contestants and judges had been briefed."で済ませることが多いです。
「2年前のコンテストで、コンテスタントがスピーチで話している間は写真撮影禁止というのを知らずに、写真を撮ってしまった。」というメンバーもいます。
少しは説明した方がいいのかな?と思ったりもします。

Posted by: kogepan | February 06, 2009 at 06:50 AM

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