第355話:「Evaluation/論評」を腑に落とした夕べ
3月31日(火)の19時30分から東京渋谷の勤労福祉会館で行われたファンタジスタクラブの勉強会に出席しました。
10日前に行われたEvaluation Boot Campで燃焼し切れなかった「Evaluationとは何か。」についてさらに深めるための会合です。
気合を入れるために、「餃子の王将」で餃子3人前と野菜炒めを平らげてから会に臨みました。
集まったのはファンタジスタクラブのアメリカ人、ロシア人、日本人メンバー計6人。勤労福祉会館の和室に座布団の上で日米露と仲良く日本語でディスカッションをしたわけです。欠席したメンバーの希望もあってこの例会の内容もビデオに録画しました。
会長から、当日の目的と流れの説明があり早速本題に入りました。Evaluationのプロセスの最初に来る「観察」(Observation)にフォーカスするのがこの日の狙いです。
まず、DVDで日本語のスピーチを一本鑑賞します。それを見ながら皆A3の紙のうえで論評用のメモを作るわけです。
スピーチを見終わると、メンバー一人ひとりが、論評メモを見せながら、
- どのようにスピーチを「観察」したか
- どのようにメモをとったか
- スピーカーのどんな点に注目したか。
を発表します。ほかのメンバーはどんどん質問をします。
これを6人分やると時計の針はすでに20時45分。1時間15分もやっていたのですね。
いろいろな学びがありました。
- あるメンバーはGLOVESをポイントに事実ベースのメモを取っていました。GLOVESとは、Gesture(身体表現), Language(言葉), Objectives(スピーチの目的), Vocal Variety(声による表現), Enthusiasm(熱意), Special(その他特記事項)の頭文字をとったもので、たとえばGestureならGestureで気がついたことをメモしていきます。さらに同じ紙に、スピーチの流れに沿ってポイントをメモしていきます。さらにステージ上の立ち位置のメモも取ってあり、大変びっくりしました。
- 人によって、メモを取る量がちがいました。論評経験の豊富な人ほどメモの量はすくなく、逆に論評経験の短い人は大量のメモを取っていました。理由は二つありそうでした。まず経験豊富な人は「必死になってメモを取ると、視線がメモ用紙にばかり行ってしまい、スピーカーを見る事ができなくなる。」ことのないように、あえてメモの手を止めてスピーカーを見ますので、メモ量は少なくなります。経験が少ない人は「メモを取らないととても不安」という心理が働いて一生懸命メモを取ります。これはどちらがよい、悪いではなく論評スキルをつけていくひとつの過程で誰しも通る道だということを確認しました。
- メモはまず良い悪いの先入観や判断なしで「観察」するためのツールです。一通りメモが終わってからその後取ったメモを見ながら、スピーチ・スピーカーの良い点、改善点を拾ってまとめていきます。つまり「観察」という工程があって、次に「分析」そして(発表を準備するための)「構成」ときます。
- メンバーの中にディベートの経験者がいましたが、この方のノート術は大変興味深かったです。「観察」と「分析」を頻繁に行っているメモです。したがってほかのメンバーがだれも気がつかなかったようなことをいくつも指摘しました。このノート術の背景をうかがうと、ディベートの勝負の最中はとにかく相手の言うことをメモして瞬時に相手のロジックの「穴」を探し攻撃、反撃するため、「観察」「分析」「構成」というサイクルを頻繁にまわさないと勝てないから、このノート術になったそうです。ただ、この方はトーストマスターズでもどうしてもディベートのモードでスピーチを聞いてしまうため、相手のモチベーションをあげる論評がなかなかできていない、そこを解決したいとおっしゃっていました。
- あるメンバーはノートをたくさん取ってしまう理由として、「自分の論評が的を得ているか自信がないため、ついメモを取ってしまう。」と正直なコメントをされました。そうですね。だれでも最初から論評がうまいわけではありません。多くの経験を通してだんだんと上手になり自信もついていくと思います。しかし、もしそこでEvaluationの基本である「もしあなたがその役を割り当てられた時、その目的は、自分の中に起こった正直な反応を、論評ガイドを使って建設的に発表することなのです。あなたはジャッジでもスピーチの権威でもありません。論評を行う際には、あなたはスピーカーの発表に対して自分自身の中に起こった反応を素直に伝えるのです。」という一文に触れることができれば、Evaluation/論評に悩む多くの方が救われるかもしれませんね。
ちなみに、私の自分の「観察」に対する気づきは
- 途中でメモに集中しすぎていることに気づき、メモの手を止めスピーチを見るようにした。
- メモを書きすぎたのは、おそらくDVDの音が良く聞こえずに不安になってメモを始めたように思う。(不安になると、ついメモを取る?)
- ただしFactのメモは不十分
ファンタジスタTMCは、毎月第三土曜日にメインの例会を行いそこで「練習」、「ディスカッション」、「ワークショップ」をみっちりと行い、それ以外の平日の夜に学びをもとに「スキルトレーニング」を実施します。
テーブルトピックスブートキャンプの時がまさにそうでした。しかしEvaluation・論評のときは、たんなるスキルよりも「論評とな何か?」「なぜ、何のために行うのか?」を腑に落としていることがベースになりますので、ここをたいへん念入りに行ったのは正解でした。
Evaluation・論評のスキルを伸ばすには、自分ひとりでできることと、このように同じスピーチを題材にお互いのノウハウと悩みを公開しあう勉強会を実施するなどいろいろなやり方があると思います。
今回の勉強会では6人いれば6通りのやり方がありますが、共通項も多く大変収穫の多い夕べとなりました。
すばらしい学びに満足しつつも、やはり餃子3人前は多すぎ、かつ野菜炒めは余計だったと反省しつつ家路を急ぐのでした。
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