第407話:スピーチクリニックの方法論
名古屋での合同例会の一週間後、以前からの約束だった溝の口トーストマスターズクラブでのスピーチクリニックでした。
5人のスピーカーの皆さんに実際にスピーチをしていただいて、ひとつ終わるごとに30分程度のフィードバックセッションを行うという拡大版の論評セッションです。
名古屋の公開講座でのスピーチクリニックも入れると短い期間で7人の方のクリニックを行ったことになります。短期集中で行ったことで、今後スピーチクリニックを行ううえでのいくつかの指針が見えてきました。
★スピーチクリニックの成功イメージ
- 実際に、Speech Manualに基づいたスピーチをしていただく。
- クリニックマスター(あるいはドクター)が、スピーチのあとで、Contents/Delivery/languageで、意図の質問、その上でのアドバイス、そして別のやり方の提案を加える。
- 実際に提案をスピーカーにやっていただき、効果を実感してもらう。また聴衆にも提案前、提案後のどちらがよかったかの意見を出してもらう。
- そのうえで、「これならできる。よしやってみよう!」という気持ちになってもらう。
★一人当たりの所要時間
- Basic ManualのProject 1から10までならば、スピーチに最大10分。クリニックに最低30分。理想的には40分から50分をかけてみたいと思います。
- ただ、スピーチコンテスト向けのクリニックの場合はこの限りではなく、体力の続く限りということもあるでしょう。
★だれがスピーカーになるか?
- いちばんよいのは、「ぜひ、自分のスピーチを診てほしい。」と手を上げられた方にチャンスをあげる事です。
- 候補者としては、壁にぶつかっている方です。あるいは「ぶつかる」ほどではないけれども、自分のスタイルをもう一度見つめなおしてみたいと思っている方。さらに、コンテストを控えて、勝ちたいと思っている方もよいと思います。
- Basic ManualのProject 1や2の方は、明確な目標と高い問題意識を持っている方ならばOKですが、まだクリニックには早い気がします。
- また超ベテランの方は、そのクラブでもアドバイザー的な役割を持っていることが多く、クリニックで自分のスピーチを診てもらうことに消極的ですが、ベテランだからこそ、あえて第三者に診てもらうという態度を示せば組織に対してとてもよい影響を与えると思います。
★クリニック中の基本的な態度 (非常に重要)
- スピーカーのスタイルを見極める。
- 自分の好みに合わないからといって、そのスタイルを否定はしない。スタイルを認めたうえで、どうすればそのスタイルが生きるのかを一緒に、会場と一緒に考える。
- 全部自分で解決しようとしない。スピーカーと対話したり、会場から意見を求めて一緒に作り上げていく。
- アドバイスをした場合、このアドバイスは納得できるかをスピーカーに確認する。
★事前準備
- スピーチクリニックが決まったら、診断をするスピーカーの方と「どんなことで困っているか。どんなスピーカーになりたいか?」をあらかじめ聞いておきます。また、このスピーカーの答えは、クリニックの最中に、会場の皆さんに公開して共有してよいか聞きます。
- スピーカーから一週間ほど前に原稿を送っていただきます。(ここが論評・Evaluationとは異なります。論評・Evaluationでは、私はそのときの発表がどのように聞こえたか予断なしに見たいのですが、クリニックの場合は、原稿まで掘り下げたいので、必要です)
- 原稿と、スピーカーのご希望と合わせてどんな貢献ができるか考えます。
できるだけ、原稿(ストーリーライン)を頭の中に入れます。
★当日
- スピーカーご本人に挨拶をします。
- ステージには、スピーチの邪魔にならないところに、いすを二つ用意してもらいます。(クリニックで使います)
- 本番が始まったら、スピーチ自体に集中するか、原稿を見ながらスピーチを見るかです。なるべく原稿を見ないでスピーチに集中したほうがよいでしょうね。
★クリニック
- 司会者から紹介されたら登壇します。
- スピーカーの労をねぎらい、会場にスピーカーに対しての拍手を求めます。
- スピーカーに着席を促します。
- まず、スピーカーに二つの質問をします。① 今、どんな気持ちか。② どのような意図でこのスピーチをやろうと思ったか。
- そのうえで、スピーカーが「どんなことで困っているか。どんなスピーカーになりたいか?」に対して答えた内容を共有します。
- そのうえで、最初から順を追ってみていきます。気になったところ、改善したほうがよいところは、適宜もういちどやっていただき、改善を一緒に考えてみます。
- たとえば、スピーカーが笑いを意図したのに、聴衆からの笑いがうまく取れなかった箇所があったら、聴衆にどのように聞こえたか?なぜ笑わなかったか?も掘り下げます。徳島TMCで初めてスピーチクリニックをやった際に、この堀さげをやって、聞き手の皆さんがとても協力してくださり非常にうまくいきました。
- 改善に関しては、Delivery(声、顔の表情、身振り、手の使い方)という即効性のあるところにどうしてもフォーカスが行ってしまいますが、たとえば「声が出ない、声が小さい」というのは、実はスピーチトピックの選び方に起因することがありますので、その場合は、トピックの選択や原稿の書き方にも話が及ぶこともあります。
- 最後に、時間があればもう一度全体を通してやっていただきます。
- なお、スピーチコンテスト用のクリニックは、言葉の一つ一つにもこだわりますし、またジェスチャー、ステージでの動き一つ一つにも、その表現の裏にある、あるいは底にある心の動きともあわせて、さらに意味を求めて掘り下げます。
スピーチクリニックは、トーストマスターズでの正規のプログラムではなく、私が考案したEvaluation Sessionの応用プログラムです。ですから、トーストマスターズのマニュアルにもそのやり方は掲載されていませんが、やり方、考え方は、Basic Manual、Evaluation Guide、ToastmastersのVision, Missionに準拠しています。
私が考案したといっても、実際には同様のことを実践された方、クラブもきっと多いと思います。
それは、例会の個人論評は3分程度とあまりにも短く伝えきらないうちに時間が来てしまうからです。終わった直後にフィードバックをもとにもう一度練習して考え方、スキルを深めるというのは「鉄は熱いうちに打て」の言葉通りとても大事です。
今回、スピーチクリニックを短期集中的に行うことを、方法論まで考える好期となりました。
東海地方のクラブの皆様。エリアガバナーの鈴木節さん、そして溝の口トーストマスターズクラブの皆様、ありがとうございました。
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もしスピーチクリニックに興味があるけど、実際に見てみたいと思われたらご連絡ください。時間の都合のつく限りできるだけ皆さんのクラブにお邪魔してやってみたと思います。
これまで、、、
徳島TMC
鎌倉TMC
エリア41 (東海地区)
溝の口TMC
あとは、スピーチコンテストを目指しているコンテスタントの方(自分がその方が出るコンテストのジャッジでない限り)へのクリニックを行いました。
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