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第434話:講演 「Taking Your Speech To The Next Level」@エリア43合同例会(1月10日、岡山)

さて、ワークショップもスピーチも、およそ人前で聴衆を相手に行うものの成否は、話し手と聞き手の協力関係の強さと深さで決まります。その意味で宝塚TMCでのスピーチクリニックは成功でした。

さて、翌日の岡山での「講演」は正直まったく未知数でした。私に与えられた時間は30分。その30分で結果を出すシナリオが実は見えていませんでした。30分でどうやって聞き手とコラボし、化学変化を起こせるのだろうか?

★準備
宝塚と同じく11月の全国大会終了後から準備を始めました。当初は世界大会での学びの共有というご注文でしたが、それでは聞き手が珍しい話を聞いて、たんに「ほぉー」っと感心して終わる懸念がありましたので、「岡山のメンバーとエリア43合同例会の参加者にとって役に立つ内容」という観点で再考することで合意しました。

また、参加者と対話しながら、全体で作り上げていくという路線も決まりました。

★アンケート

12月に岡山TMCのくろちゃんが、岡山メンバーにアンケートを取ってくださいました。

アンケートの質問は二つ。

  • Q1. 「来月スピーチをお願いします」という要請に対して、「えっ?!」と思う、その最大の理由は何ですか?
  • Q2. 「さぁ、スピーチを作ろう!」とする時点で一番困るのはどんな所?

その結果のコメントを集約すると次の3つになります。

  • ネタがない。
  • スピーチを準備する時間が無い。
  • 練習すると思うと気が重い。

文面から皆さんが悩みながらスピーチをされている姿が浮かびました。もし当日こうした悩みに完璧に回答できたら、皆さんのモチベーションが高まるだろうな、と思いつつ、やはり「30分で結果を出すコンテンツ、構成、デリバリー」で悩みは続きます。

私が皆さんからの回答を読みながら自分の中で問い続けた質問は次の二つです。

  • どうして、こんなにネタだらけの世の中で、「ネタがない」なんて悩みが生まれるんだろうか?もしかしたら、そこには「パブリックスピーキング(あるいは演説)のトピックはかくあるべし。」という思い込みが無いだろうか?
  • なぜ「時間がない。」という声がたくさんあるのだろうか?もしかしたら「実は時間はなくて当たり前。」ということに気がついていらっしゃらないのではないだろうか?

すーじさんとSkypeやメールでやり取りしながら、岡山TMCの実情も聞き取りし、イメージを膨らませていきました。そのメールのやりとりにくろちゃんも参戦し、スピーチ作りについてとてもよいコメントを追加してくれます。

だんだんとイメージが湧いてきました。

★当日
エリア43の合同例会で、岡山市の国際交流センターの12階会場には、岡山、東神戸、関西、徳島、香川、高知、広島の各クラブから50人を超える皆さんが集まりました。すべて英語クラブですので例会の言語は英語です。

プログラムは基本的にトーストマスターズの標準的な例会構成と同じで、メンバー5人によるスピーチとその論評、そして総合論評と進みます。個性あふれるスピーカー、論評を大いに楽しみ、学びました。

一通りの例会プログラムが終了し、いよいよ私の番が回ってまいりました。(当日の例会の全体構成については、岡山TMCのすーじさんのブログの記事「感謝」をお読みください)

★私の講演
宝塚でもそうなのですが、私は皆さんに笑っていただきながら話をするのがとても好きです。母国語である日本語で、リラックスして進めさせていただきました。

まず簡単に自己紹介し30分の講演の目的について話します。
① 「時間がない」ことについて
② 「ネタがない」ことについて
③ 自信をつける

① 「時間がない」ことについて
まず、スピーチを作る際の作業について皆さんにお聞きしました。

一ヵ月後の土曜日に例会があるとして、どんな作業をするか、皆さんから意見を出していただきます。

作業フェーズ順にネタ集め、構想、原稿書き、練習、本番です。

次に、練習をいつから開始するか?

例会の一日前、二日前、三日前。ちらほらいらっしゃいますが、そんな危ないことをする人はあまりいません。一週間前。三分の一くらいの皆さんの手があがります。それを自分の目で確認していただきます。みんなそうなんだと。

さらにさかのぼって、二週間前、三週間前、一ヶ月前。ほとんど手があがりません。

多くの皆さんが例会の一週間前までにスピーチ原稿を書き上げ、そこから練習に入っているようです。つまり、自分の中では一週間前までに原稿を書き上げるという締め切りを持っているって事ですね。

じかし現実は「それでも時間がない」と思う。

何に対して時間がないのでしょうか? そこで問いかけます。

「では、時間がたくさんあれば、よいスピーチ、満足がいくスピーチが作れるのでしょうか?」

会場から笑いが出ます。難しいですよね。時間があってもよいスピーチを作れるかどうか。

ここで、私の経験です。2007年、2008年5月のD76の決勝で勝ってから8月のインターディストリクトまで、約3ヶ月ありました。3ヶ月もあればよいスピーチが作れそうです。

でも実際はどうだったか?

5月後半、6月とネタ集め、構想に散々苦しみました。約1ヶ月半をネタ集めです。7月からスピーチを書いて書きながらいろんなクラブを回って、同時にもうひとつのスピーチも書きます。

一つ目のスピーチがまぁまぁになったら、今度は二つ目のクラブを仕上げてほかのクラブを訪問して練習です。8月に入ると二つのスピーチを練習です。それでも、自分が思っていたイメージとはどうも違う。

時間があっても自分の中では納得できない。そんなものなのかもしれない。

皆さん、仕事や家庭があってトーストマスターズに来ている。そもそもそれ自体「無理」なこと。その「無理」を承知でやっているのだから、時間がないという「無理」も仕方がない。

でも逆にその与えられた時間の中でベストを尽くす。それしかないのですよ。

だからがんばりましょう! と結びました。

② 「ネタがない」ことについて

私の講演の前の5人のスピーカーの方々のスピーチを振り返りました。資源のリサイクルの話、60歳を過ぎてますます体を鍛えていらっしゃる方の話、闘病しながら子供たちを教えたアメリカの先生と闘病をしながら翻訳をしたご友人の話など、自分の身の回りから題材をとってスピーチをされている。そこには、「パブリックスピーキング(あるいは演説)のトピックはかくあるべし。」という気負いは感じられません。

何の思い込みがあるのかな?そう思って、会場に質問を投げました。

「トーストマスターズで禁止されているトピックは何でしょうか?」

たちまち「宗教」という声があがります。次に「政治」。それに続いて人を傷つける話題などいくつか出てきます。私は、さらに「エス・イー・エックス」を追加しました。この3つがタブーだという会場のコンセンサスができました。

では、宗教、政治、セックスの話題を禁止しているマニュアルは何でしょうか? という質問を会場に投げました。

答えはありません。

そこに2006年に国際本部が発行したTipsというクラブ役員向けのニュースレターのある記事を紹介しました。(詳しくはこのブログの「第166話:セックスと政治と宗教と」をお読みください。)

「Toastmasters Internationalは宗教、政治、セックスの話題は禁止していない」という明確なアナウンスを読み上げると、ちょっとしたどよめきが起こりました。

「ただし」

大事です。

「その話題で聞き手が不愉快な思いをするのであればそれはすべきではない。」

つまり、特定の禁止トピックやタブーはありません。

聞き手が不愉快な思いをしなければ何を話してもよい。

冒頭の、「ネタがない」ことについて再び戻ります。禁止トピック、タブーがないことがわかった今、「相手を不愉快にしなければ何でもあり」ということを念頭において、もっと心を自由に好きな話をしてみてはいかがでしょうか? とまとめました。

そして最後の③ 自信をつけるに話を移します。

ここで「ジョハリの窓」に話を移ります。ホワイトボードにジョハリの窓を描きながら私なりの説明を加えます。(詳しくは、「第416話:ユーモアスピーチと「ジョハリの窓」」をお読みください。)

トーストマスターズでの論評をもらうことで、他人が知っていて自分が知らない自分に気づく。そのことで、自分の可能性が広がる。広がった可能性で自分に自信がつく。

自信がついたら、そしてトーストマスターズでいろいろな人の個人的な話を聞いたら、「自分だけではない。」ことに気がつく。

それまでかたくなに隠していたことも、別に隠さなくてよくなる。

そのことで、さらに「自分も知っていて他人も知っている領域」が広がる。隠し事を持っているストレスから開放される。

それがトーストマスターズの例会で、自分の話をし、人の話を聞き、論評をもらう価値なのだと思う。

と、展開します。

トーストマスターズの例会では誰もが失敗する。でもそれは別に気にすることではない。トーストマスターズの例会は練習の場所だから失敗してまったくかまわない。

この会場のドアをあけてこの部屋を出ると、そこには「世間」が待っている。そこで失敗しないように、ここで失敗して学ぼう。

「時間がない」でお話したけれども、トーストマスターズをやっていること自体、「無理」をしていることに過ぎない。

「無理」をして失敗しても構わない。

でも、今日の例会では、前回の例会でできなかったことをちょっと無理してやってみよう。今日も失敗するかもしれない。

だったら次回の例会でやってみよう。そして自信をつけよう。

それがトーストマスターズのよいところだと思う。

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そう締めくくって私の講演を終わりました。時間にして33分。3分オーバーです。実行委員長のすーじさんから多少伸びても構わないと事前に言われていましたので、自分に甘く3分は許容範囲としましょう。

その後Q&Aセッションです。

①東さんは貯金をいくらお持ちですか? うっかりまじめに答えてしまった。まだまだですねー、==> 私。
②声を鍛えるために実践していること。 自分の声が会場に響いていること。自分の声と声の間の、間(ま)、静寂も含めて練習の際にイメージを明確にもつこと。そして何よりも、声を出す、というより相手に自分のメッセージを伝えようという意思、マインドを強く持つ。
③東さんがTMに入る前と後で一番変わったことは? 今日のようなたくさんの聴衆を前にしても、そんなに気負わず友達との日常会話のように話せるようになったことではないでしょうか?おそらくジョハリの窓でいう「自分も他人も知っている領域」がトーストマスターズに入ってから拡大したからだと思います。

さて、今となっては定かではないのですが、この日の講演のどこかでベーシックマニュアル(CCマニュアル)の使い方について話をしました。

私が送りたかったメッセージは、スピーチ作りの「入り口」は常に伝えたいメッセージにあるよ。ということでした。

ですから、Vocal VarieryやBody Languageを扱ったプロジェクトでも、最初から「声」や「身振り、手振り」を意識しすぎてスピーチを作るのはなく、まず自分が伝えたいメッセージをしっかりと持ってスピーチを作り上げて、そこに「声」や「身振り、手振り」という表現を加えていくのがあるべき作り方であることをお伝えしました。

ただ、ちょっと私の伝え方がまずくて、当日、大きな身体表現でスピーチをされた方や冒頭で歌を歌った方に、否定的に伝わったかもしれません。私は、このお二人のスピーチを念頭においていったわけでは決してないことをここで強調しておきます。

★二次会
会場から10分ほど歩いた地下街のお店でたくさんの方とお話しました。話に夢中であまり食べませんでしたねー。

★三次会(憧れの聖地:すーじ家にて)
以前から、一度伺いたいと思っていたすーじさんのお宅に伺いました。ご主人のてるぞうさんが暖かく迎えてくださいました。ここが有名な「すーじ家」か。この夜から翌日にかけてのことはすーじさんのブログの「記事」に譲ります。(酔っ払った私の記憶のない部分も鮮明にルポしてくださっています。赤面)

★振り返って
話し手と聞き手の協力関係の強さと深さで決まります。その意味で岡山での今回の講演も自己評価ですが大成功でした。

★補足
準備段階のすーじさんとのやりとりで、「スピーチはConclusionから作る!」という話を講演の中に入れるという約束をしていましたが、ころっと忘れておりました。失礼しました。

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